
MoTeC のデータ解析ソフトウェア i2 は、「凄い」「優秀」「プロのレーシングチームも使っている」「世界標準だ」とよく言われます。 しかし、実際に どのように走りを解析し、どんな情報が得られるのか は、触ったことがない人にはなかなか伝わりません。
一方で、近年のチューニングカーは驚くほど進化しています。 ドライカーボン(オートクレーブ製法)の GT ウイングやアンダーパネル、ボンネット、フェンダー、リアゲート、さらにはドアまで。 軽量化とエアロダイナミクスは、もはやレーシングカーと同等の領域に踏み込んでいます。 タイヤに至っては、大手メーカーがタイムアタック専用コンパウンドを市販する時代です。
しかしその一方で、走りの解析だけは20年前からほとんど進化していません。 GPS の走行軌跡を眺めて「ここが速い・遅い」と判断するレベルで止まっているケースが多いのが現状です。
さらに厄介なのは、人間の感覚がいかに不確かかという点です。
- 体調が良い・悪い
- 気分が乗る・乗らない
- 路面の状況は?
- なんとなく車が軽い・重い
- なんとなく曲がる・曲がらない
- タイヤの状態は
こうした曖昧な感覚に左右され、 その“なんとなく”を根拠にセッティングを変更してしまうことも珍しくありません。
そして変更後に走ると、 プラシーボ効果で「良くなった気がする」 という現象も普通に起こります。
実際、近年のレーシングチームでは 「ドライバーのコメントは参考程度。最終判断はデータ」 という運用にシフトしていると言う話も聞きます。 人間の感覚は体調や気分に大きく左右されるため、 データの方が圧倒的に信頼できるからです。
車両は GT カー並みに進化しているのに、 判断材料は「気分」「感覚」「思い込み」。 これでは本来の性能を引き出すことはできません。
そこで今回は、MoTeC i2 を使った解析の一例として紹介します。
エンジン制御に関するセンサー情報(ECUとのCAN通信により取得)の他に下記のセンサーでの解析方法の紹介となります。
<今回の解析で使用しているセンサー>
- ブレーキ油圧センサー(フロント/リア)
- 純正 ABS センサー
- ギアシフトセンサー
(GPSスピードとエンジン回転より算出可能) - スロットルポジションセンサー
- GPSアンテナ
<解析対象車両・サーキット>
- 車両:Mazda RX-7(FD3S)
- 検証サーキット:筑波サーキット2000
ワークシート構成
ワークシートタグ

i2 には、解析目的に応じてレイアウトが最適化された 機能別ワークシート が標準で用意されています。 画面上部のタブ(タグ)をクリックすることで、各ワークシートを切り替えることができます。
標準状態では、以下のワークシートが準備されています。
<標準ワークシート一覧>
① Driver
② Braking
③ Engine
④ Fuel / Ign
⑤ Mixture Map
⑥ Oil Pressure
⑦ RPM Histo
⑧ Track Report
⑨ Channel Report
⑩ Section Times
:ドライバー操作に関するワークシート (ステアリング、ブレーキ、スロットル、速度など)
:ブレーキ動作に関するワークシート (ブレーキ圧、減速度、ブレーキポイントなど)
:エンジン関連のワークシート (回転数、スロットル、負荷、各種エンジンパラメータ)
:燃料および点火に関するワークシート (燃料噴射量、点火時期、燃調関連)
:空燃比(ラムダ)に関するワークシート (ラムダ分布)
:エンジン油圧に関するワークシート (油圧変動、油圧低下ポイントの確認)
:エンジン回転数のヒストグラム (使用回転域の分布)
:トラックレポート (トラックにおけるスロットル開度、ブレーキの強弱の表示)
:チャンネルレポート (登録したチャンネルの詳細区間データ)
:セクションタイム (詳細区間ごとのタイム、仮想ベストタイム)
ワークシートの追加
標準ワークシートに加えて、ユーザー自身が 任意のワークシートを追加 することも可能です。 用途に応じて、独自の解析レイアウト(例:ストローク専用、タイヤ専用、比較解析専用など)を作成できます。
では、ワークシート別に何がわかるのかを解説したいと思います。
1.Driverシート

<チャンネル>
①:Variance
②:GPS Speed[km/h]
➂:Throttle & Brake
・Throttle Pedal
・Brake Pressure Front
・Brake Pressure Rear
④:Rear Slip Ratio[%]
:分散(タイム差)
:車両スピード
:アクセルべダルとブレーキ
:アクセルべダル
:フロント
:リア
:リアタイヤのスリップ率[ABSセンサーの車輪速より計算]
| <2輪駆動車限定> タイヤのSlip Ratioは ⑤Wheel Speed から算出する“参考値”ではありますが、 路面状況やタイヤのコンディションを判断するうえで大切な指標です。 非駆動輪は基本的に路面に合わせて転がるだけですが、 駆動輪は路面を“蹴って”摩擦力にて駆動力を発生させ車を前に進めます。その際、 必ず非駆動輪との間に回転差が生じます。 この回転差を割合(%)として表したものが Slip Ratio です。 ドライバーがよく 「今日は路面が悪い」 「タイヤのグリップがいい」 といった感覚的なコメントをしますが、 Slip Ratioはその“感覚”を 数値として可視化したもの と言えます。 絶対値そのものよりも、相対的な変化を追う指標として非常に優秀です。コーナー立ち上がりではタイヤの駆動力を多く使用するためスSlip Ratioが高く、 速度が伸びるにつれて徐々に低下していくのが一般的な挙動です。 |
⑤:Wheel Speed[km/h]
・Wheel Speed FL
・Wheel Speed FR
・Wheel Speed RL
・Wheel Speed RR
⑥:Gear
:ABSの車輪速(タイヤ外形からの計算により高めに表示される)
:左前
:右前
:左後
:右後
:ギア
1.1 個別解析

では一周を10セクションに分割してみていきます。
1:ホームストレートを駆け上って、アクセルOFF直前まで
2:1コーナー侵入、アクセルOFFからブレーキしてアクセルON直前
3:1コーナー立ち上がり、アクセルONから1ヘア侵入アクセルOFF直前まで
4:1ヘア侵入、アクセルOFFからブレーキしてアクセルON直前
5:1ヘア立ち上がり、アクセルONからダンロップ侵入アクセルOFF直前まで
6:ダンロップ侵入、アクセルOFFから2ヘア侵入アクセルOFF直前まで
7:2ヘア侵入、アクセルOFFからブレーキしてアクセルON直前
8:2ヘア立ち上がり、アクセルONから最終コーナーアクセルOFF直前まで
9:最終コーナー侵入、アクセルOFFからブレーキしてアクセルON直前
10:最終コーナー立ち上がり
1.1.1:ホームストレートを駆け上って、アクセルOFF直前まで

1.1.2:1コーナー侵入、アクセルOFFからブレーキしてアクセルON直前

1.1.3:1コーナー立ち上がり、アクセルONから1ヘア侵入アクセルOFF直前まで

1.1.4:1ヘア侵入、アクセルOFFからブレーキしてアクセルON直前

1.1.5:1ヘア立ち上がり、アクセルONからダンロップ侵入アクセルOFF直前まで

1.1.6:ダンロップ侵入、アクセルOFFから2ヘア侵入アクセルOFF直前まで

1.1.7:2ヘア侵入、アクセルOFFからブレーキしてアクセルON直前

1.1.8:2ヘア立ち上がり、アクセルONから最終コーナーアクセルOFF直前まで

1.1.9:最終コーナー侵入、アクセルOFFからブレーキしてアクセルON直前

1.1.10:最終コーナー立ち上がり

1.2 ラップ比較解析
これまでは単一ラップの個別解析により、ドライバーの操作や車両挙動を詳細に確認してきました。 ここでは、セッティング変更やドライビング修正を行った後の走行データを用いて、どのように変化したのかを比較解析する方法を説明します。 単周解析で「現状を理解する」段階を終えたら、次は “変化を確認する” 段階に進みます。 i2 の比較解析機能を使用することで、改善点・悪化点・変化の理由を明確に把握できます。
事前準備
比較解析を行う前に、以下の準備を行います。
・比較したいログデータをすべて読み込んでおく (例:セッティング変更前のラップ、変更後のラップ、ドライビング修正後のラップなど)
i2 は複数ログを同時に読み込むことで、 ラップタイム・速度・操作・車両挙動を重ねて比較することが可能です。
比較解析の目的
比較解析では、次のようなポイントを明確にできます。
- セッティング変更がどの区間に影響したか
- ドライビング修正が意図通りに反映されているか
- タイム短縮の要因(ブレーキ、旋回、立ち上がりのどこか)
- タイムロスの原因(操作、ライン、車両挙動のどこか)
- Slip Ratio・ステア角・G などの挙動変化
単周解析では「何が起きているか」を見るのに対し、 比較解析では “なぜタイムが変わったのか” を明確にできます。
比較解析の基本操作(概要)
- 比較したいラップを選択
- 基準ラップ(Reference Lap)を設定
- Delta Time(タイム差)を表示
- 速度・ステア角・ブレーキ圧・ストロークなどを重ねて比較
- 区間ごとの挙動差を確認
※詳細な操作手順は次の章で説明する構成にしても自然に繋がる。
データをクリックすると読み込んだ全てのデータがラップごとにタイム表示されます。

① メイン:〇部分をクリックするとログ画面にはフルカラーのグラフ表示
② 比較1:□部分をクリックするとログ画面には白色でグラフ表示
➂ 比較2~:□部分をクリックすると□に内に数字表示と色が付きます
上記➂ではいくつもクリックし比較させることも可能ですが、②の比較1だけで解析する方が課題も判断しやすくお勧めです
では次頁以降に比較1までの二つの波形を確認します。
<比較画面>

2つのログデータを読み込むと、最上段の Variance にメインラップに対する比較ラップのタイム差がリアルタイムで表示されます。 メインより速い区間ではプラス、遅い区間ではマイナスとして描画され、どの操作がタイムにどう影響したかを一目で把握できます。
たとえば、ブレーキを“ほんの一瞬だけ”遅らせて突っ込むと、その瞬間に Variance が鋭くマイナス側へ振れます。 しかし突っ込み過ぎれば、進入でアンダーを誘発したり、向きを変えようとしてオーバーステアを出したりして、その失ったタイムが一気にプラス側へ跳ね返ってくるのが分かります。
- ブレーキの強弱
- ブレーキポイントのズレ
- アクセルオンのタイミング
こうした操作の違いが “どれだけタイムに効いているか” を瞬時に比較できるのが Variance の最大の強みです。 「タイムが出ないと思ったら、実はブレーキやアクセルのタイミングがまるで違っていた」──そんな場面はデータを見ると日常的に起きています。
そして わずか数クリックでここまで詳細な比較が瞬時にできることこそ、i2 の圧倒的な強みです。

また、詳細を拡大確認したければ、確認したいスタート箇所でダブルクリックし、確認したい終了箇所でクリックした瞬間に対象部分が拡大表示されます。(マウスのホールでの拡大/縮小も可能)

この拡大したSlip Ratioを確認すると、メインの紫より白の比較波形の方のSlip Ratioが明らかに高くなってます。
これはタイヤもしくは路面状況がメインの走行時より明らかに悪いことが読み取れます。

裏ストレート区間を拡大して比較すると、ドライビング技量がほとんど影響しないはずのストレートで、明確にSlip Ratioに差が出ていることが分かります。当然、その差はそのまま 最高速の差 に直結します。
「今日は最高速が出ない」「なんでこんなに遅いんだ?」という声をよく耳にしますが、こうした場面では Slip Ratioを確認するだけで原因の方向性が一気に絞れます。 Slip Ratioが高めで推移していれば タイヤのグリップ不足や路面状況の悪化 が疑われますし、逆にSlip Ratioが低い場合は 駆動力が路面に負けている(=パワー不足・空気抵抗増加・ギヤ比不適合など) といった別の要因が見えてきます。
1ヘア侵入時の拡大ログ

①アクセルOFFタイミング、②ブレーキの開始タイミング、➂ブレーキの強度が違うのが読み取れます。
また、➂のブレーキが強いため、④の右フロント、右リアの輪速が低下し、結果的に⑤Slip Ratioが高くなってます。
ここにステアリングアングルセンサーがあると、右に舵角を入れてるのが確認できるはずです。
2ヘア侵入時の拡大ログ

①アクセルOFFタイミング、②ブレーキの強度が違うのが読み取れます。
アクセルOFFを遅らせ、強いブレーキで車を止めようとしてます。
結果、➂の左フロントと左リアの輪速が低下し、④Slip Ratioが高くなってます。
その後、ブレーキを強く残したまま旋回にはいり、⑤右フロントの輪速は瞬間ほぼ停止、右リアも左の50%まで輪速は低下してます。
1.3 GPSトラック表示

1.4 Maths機能

数学をクリックすると計算画面が開きます。
i2 の Maths 機能では、既存チャンネルに対して演算処理や補正処理を行い、新たなチャンネルを生成することができます。走行解析に必要な派生チャンネル(例:Slip Ratio、オーバーステア量など)は、この機能を用いて作成します。
<Maths メニューの機能一覧>
Add Expression:式の追加(新規チャンネルの生成)
Add Scale/Offset:スケール値・オフセット値の補正
Add Filter:フィルター処理(ノイズ除去)
Add Expression(式の追加)
Add Expression では、既存チャンネルに対して四則演算を用いた計算式を設定し、 新たなチャンネルを生成することができます。
代表的な例として、以下のような派生チャンネルが作成可能です。
<Slip Ratio>
Wheel Speed を用いて算出する代表的な派生チャンネルで、 駆動輪と非駆動輪の回転差を%で表したものです。
<オーバーステア[°]>
i2 標準機能で算出可能なチャンネルで、 車両の旋回挙動を角度として可視化します。
オーバーステア量を算出するためには、以下のセンサー情報が必要です。
・ステアリングアングルセンサー
・4輪速(Wheel Speed FL / FR / RL / RR)
・横加速度(G Force Lat)
これらの情報を組み合わせることで、 ドライバーが「曲がらない」「リアが流れる」と感じる挙動を数値として可視化できます。
本機能の活用効果
Maths 機能を利用することで、 ドライバーの主観に頼りがちなアンダーステア/オーバーステアの判断を、 客観的なデータとして確認できるようになります。
・感覚ではなく数値で判断できる
・セッティング変更の効果を正確に比較できる
・路面状況やタイヤ状態の変化を定量的に把握できる
解析の精度が大幅に向上し、走行改善に直結する情報が得られます。
2.Brakingシート

<チャンネル>
①:Corr Speed
②:Engine Speed
➂:G Force Long
④:Brake Pressure
⑤:Wheel Speed
⑥:Gear
:車速
:エンジン回転
:縦加速度
:ブレーキ油圧
:車輪速
:ギア
<Brakeシート>
1. どこでブレーキを開始しているか(ブレーキポイント)
- Brake Pressure(ブレーキ油圧)が立ち上がる位置で判断
- 速いラップと遅いラップを比較すると、ブレーキ開始位置の違いが明確に見える
2. ブレーキの踏み方(強さ・速さ・安定性)
- Brake Pressure の立ち上がり方
- 一気に踏んでいるのか、じわっと踏んでいるのか
- 途中で抜いたり踏み直したりしていないか → ドライバーの癖が丸見えになる
3. 減速G(G Force Long)との関係
- ブレーキ圧に対して縦Gが正しく出ているか
- タイヤがロック気味だと G が頭打ちになる
- ABS の介入も波形で分かる
4. 車速(Corr Speed)の落ち方
- ブレーキの効き具合
- タイヤのグリップ状態
- 路面状況の良し悪し → 同じ踏力でも路面が悪いと減速が弱くなる
5. Wheel Speed(4輪速)でロックの有無を判断
- どのタイヤが先にロックしたか
- フロント左右の差で“片効き”が分かる
- リアが浮いていると後輪速が乱れる
6. ギア操作(Gear)との連動
- ブレーキング中のDownshiftDownShiftタイミング
- 回転合わせが適切か
- シフトショックで車体が乱れていないか
ブレーキシートで最終的に何が分かるのか?
- ブレーキ開始位置
- ブレーキの踏み方(強さ・速さ・安定性)
- 減速Gの出方
- タイヤのグリップ状態
- ロックの有無
- Downshiftの適切さ
- 速いラップと遅いラップの違い
「ブレーキングの良し悪しをすべて可視化するシート」
3.Engineシート

<チャンネル>
①:Engine Speed
②:Coolant/Engine Oil Temperature
➂:Inlet Air Temperature
④:Engine/Fuel Pressure
⑤:Bat Volts ECU
:エンジン回転
:冷却水/エンジンオイル 温度
:空気温度
:エンジン油圧/燃圧
:ECU入力電圧
<エンジンシート>
① Engine Speed(エンジン回転)
- 回転の上昇・下降のスムーズさ
- レブリミット付近の挙動
- 失火や息つきがあれば波形が乱れる
→ ドライビングとエンジン負荷の関係が分かる。
② Coolant / Engine Oil Temperature(冷却水温・油温)
- 水温・油温の上昇傾向
- オーバーヒートの兆候
- 連続周回での温度安定性
- 油温が高すぎると油圧低下とセットで異常が見える
→ エンジンの熱管理が正常か判断できる。
③ Inlet Air Temperature(吸気温)
- 吸気温が高いとパワーダウン
- 夏場や連続周回での熱だれ確認
- インタークーラーの効き具合
- 吸気温の変化とノッキングリスクの関連
→ 吸気温の高さはそのままパワー低下に直結する。
④ Engine Oil Pressure / Fuel Pressure(油圧・燃圧)
これは非常に重要。
- 油圧低下 → エンジンブローの前兆
- コーナリング中に油圧が落ちる → オイル偏り
- 燃圧低下 → 燃料ポンプやレギュレーターの不調
- 高回転で燃圧が落ちる → 燃料供給不足で危険
→ エンジン保護のための最重要項目。
⑤ Bat Volts ECU(ECU入力電圧)
- 電圧低下 → 点火不良・燃料ポンプ能力低下
- オルタネーターの不調
- 高負荷時に電圧が落ちると失火の原因になる
→ 電源系の健康状態が分かる。
このシートで最終的に何が判断できるか
- エンジンが正常に動いているか
- 温度・油圧・燃圧が安全範囲か
- パワーダウンの原因(吸気温・燃圧・電圧)
- 連続周回での熱ダレ
- エンジンブローの兆候
「エンジンの健康状態とパワーの出方を総合的に監視するシート」
4.Fuel / Ignシート

<チャンネル>
①:Engine Speed
②:Throttle Position
➂:Boost Pressure
④:Fuel Pressure
⑤:Fuel Injector Duty Cycle
⑥:Exhaust Lambda
:エンジン回転
:スロットルポジション
:過給圧
:燃圧
:インジェクターデューティー
:ラムダ
<Fuel / Ignシート>
① Engine Speed(エンジン回転)
- どの回転域を使っているか
- ブースト・燃圧・ラムダとの相関
- 高回転で燃料が足りているかの判断材料になる
② Throttle Position(スロットル開度)
- ドライバーがどれだけアクセルを踏んでいるか
- ブーストの立ち上がりが一致しているか
- “踏んでいるのに加速しない”原因を探せる
③ Boost Pressure(追給圧)
- ターボの立ち上がり
- ブーストの安定性
- ブースト抜け・制御不良の兆候
- 気温や吸気温による変化
→ パワーの出方を直接左右する最重要項目。
④ Fuel Pressure(燃料圧)
- 高回転で燃圧が落ちていないか
- ポンプ・レギュレーターの健康状態
- ブーストに対して燃圧が追従しているか
→ 燃圧低下は即パワーダウン、最悪エンジンブローに繋がる。
⑤ Injector Duty Cycle(インジェクターデューティー)
- インジェクターの使用率
- 100%近い → もう燃料が足りていない
- セッティング変更の限界点が分かる
- ブーストアップ時の安全マージン確認
→ 燃料供給の“余裕”が分かる指標。
⑥ Exhaust Lambda(ラムダ=空燃比)
- 燃料が濃い/薄いの判断
- ブースト時の安全性
- ノッキングリスク
- パワーが出る空燃比になっているか
→ 燃調の最終判断はラムダで行う。
このシートで最終的に判断できること
- ブーストに対して燃料が足りているか
- 高回転で燃圧が落ちていないか
- インジェクターの余裕があるか
- 空燃比が適正か(濃すぎ/薄すぎ)
- アクセル操作とパワーの出方が一致しているか
- セッティング変更が正しく反映されているか
- パワーダウンの原因(吸気温・燃圧・ラムダなど)
「エンジンが安全に、そして最大パワーを出せる状態かどうかを総合的に判断するシート」
5.Mixture Mapシート

<Mixture Mapシート>
1. 回転数 × 負荷(スロットル開度)ごとの Lambda の傾向
縦軸が Lambda(空燃比)、横軸が エンジン回転数。 さらに スロットル開度で色分けされているので、
- 低負荷(アクセル開度小)
- 中負荷
- 全開(WOT)
それぞれで どんな燃調になっているか が一目で分かる。
2. 濃い/薄い領域の特定
点の位置が Lambda の値を示すので、
- 濃すぎる(Lambda 低い)
- 薄すぎる(Lambda 高い)
- 狙った値に収まっているか
がすぐ判断できる。
特にターボ車では、 高回転 × 高負荷で薄いと危険(ノッキング・ブローの原因) なので、このマップは非常に重要。
3. 燃調マップの“穴”や“偏り”が見える
Mixture Map は、実際の走行データをプロットしているので、
- 走っていない領域(点が無い部分)
- 走行中に偏っている領域(点が集中する部分)
- ある回転だけ極端に濃い/薄い
といった 燃調のムラ が視覚的に分かる。
4. セッティング変更の効果が分かる
燃料マップやブースト制御を変更したあと、
- どの領域が改善したか
- 逆に悪化した部分はどこか
- 全開時の Lambda が狙いどおりか
を比較できる。
5. 吸気温・燃圧・デューティーとの関連も読み取れる
Mixture Map 単体では Lambda だけだけど、 他シートと合わせると、
- 吸気温が高い → Lambda が薄くなる
- 燃圧が落ちる → Lambda が薄くなる
- デューティーが限界 → Lambda が薄くなる
といった 原因追及 ができる。
6.Oil Pressureシート

<Oil Pressureシート>
1. 横Gと油圧の関係が一目で分かる
縦軸が Oil Pressure(油圧) 横軸が 横G(Lateral G)
つまり 「どれくらい横Gがかかったときに油圧が落ちるか」 を直接見るためのグラフ。
2. 左コーナー・右コーナーで油圧がどう変化するか
画像の赤丸部分のように、 横G が左方向にかかった瞬間に油圧が落ちているなら、
- オイル偏り
- オイルパン形状の問題
- オイル量不足
- ポンプ吸い込み不良
などの可能性がある。
→ コーナリング中の油圧低下はエンジンブローの典型的な前兆。
3. アクセル開度(Throttle Position)との関連も見える
色分けがスロットル開度なので、
- アクセルON時に油圧が落ちるのか
- アクセルOFF時に落ちるのか
- 高負荷時だけ落ちるのか
といった“状況別の油圧変化”も読み取れる。
4. 危険な領域を特定できる
油圧が一定値を下回ると、
- メタル焼き付き
- カム・クランク損傷
- ターボへの油供給不足
など、致命的なトラブルに直結する。
「横Gによる油圧低下を可視化し、エンジン破損のリスクを事前に発見するための解析シート」
7.RPM Histoシート

<RPM Historyシート>
1. どの回転域を多く使っているか(使用頻度)
縦軸は「割合」、横軸は「Engine RPM」。 つまり “どの回転数に滞在している時間が長いか” が分かる。
- 高回転域に集中 → パワーバンドをしっかり使えている
- 低回転域に多い → ギアが合っていない可能性
- 中間域に偏る → 加減速が多い区間が多い
走行の“傾向”が一目で見える。
2. スロットル開度ごとの回転域の使い方
色分けがスロットル開度なので、
- 全開(100%)でどの回転を使っているか
- 部分開度でどの回転に滞在しているか
- 立ち上がり時の回転域
- 伸び切り不足(高回転で全開が少ない)
などが分かる。
→ アクセル操作と回転の関係を視覚的に確認できる。
3. ギア選択の適正が分かる
RPM の分布を見ることで、
- ギアが高すぎる(回転が低い)
- 逆にギアが低すぎる(回転が高すぎる)
- パワーバンドを外している区間がある
といった ギア選択のミス が浮き彫りになる。
4. エンジンの負荷状況や走行スタイルの傾向
- 高回転域に長く滞在 → 攻めている
- 低回転域が多い → 慎重 or トラフィック
- 全開率が低い → 路面状況が悪い or ドライバーが踏めていない
- 回転のバラつきが少ない → 安定した走り
走行の“性格”が分かる。
5. セッティング変更の効果も確認できる
ギア比変更、ブースト調整、パワーバンドの変化などがあれば、
- どの回転域に滞在する時間が変わったか
- 全開時の回転域が変化したか
- 伸びの改善・悪化
といった セッティングの影響を定量的に確認できる。
「エンジン回転の使用分布を可視化し、ドライビングの癖・ギア選択・パワーバンドの使い方を分析するためのシート」
8.Track Reportシート

<Track Reportシート>
Track Report シートは、サーキット1周のブレーキ・アクセル・速度などをコース図上に可視化し、走行全体の傾向を把握するためのワークシートです。 さらに、このシートでは 表示する評価チャンネルを任意に選択できる ため、目的に応じて解析内容を切り替えることができます。
アクセル開度とブレーキ油圧を評価した場合
1. サーキット1周のブレーキポイント
コース上の赤い部分が ブレーキ圧の強さ を示している。 濃い赤ほど強く踏んでいる。
- どこでブレーキを開始しているか
- どれくらいの強さで踏んでいるか
- ブレーキの“引きずり”があるか
- 速いラップと遅いラップの違い
が視覚的に分かる。
2. アクセル開度(スロットル)の使い方
青い部分が アクセル開度 を示す。 濃い青ほどアクセルを大きく踏んでいる。
- コーナー立ち上がりでどれだけ踏めているか
- 直線でアクセルを戻していないか
- 踏み始めが早いか遅いか
- 路面状況やラインの違いによる踏み方の変化
が読み取れる。
3. 区間ごとの速度(Corr Speed)
コース上に表示されている数値(例:217.2 km/h、76.2 km/h)が その地点の実速度。
- 最高速がどこで出ているか
- コーナー進入速度の比較
- 立ち上がりの伸びの違い
- セッティング変更前後の速度差
が明確になる。
4. コーナーごとの特徴が一目で分かる
ターン1〜ターン6までの各コーナーで、
- ブレーキの強さ
- アクセルの戻し方
- 立ち上がりの踏み始め
- 速度の落ち方・伸び方
が地図上で直感的に理解できる。
5. 走りの“癖”が丸見えになる
- ブレーキが早すぎる
- アクセルONが遅い
- コーナーごとに操作がバラつく
- 直線でアクセルを戻してしまう
- 立ち上がりで踏めていない区間がある
など、ドライバーの操作傾向が一目で分かる。
「サーキット1周のブレーキ・アクセル・速度を地図上で可視化し、走り全体の強みと弱みを瞬時に把握できる」




9.Channel Reportシート

<Channel Reportシート>
1.表示できる統計項目(Channel Report の選択項目)
Channel Report シートでは、各チャンネルに対して どの統計値をレポートに表示するかを自由に選択できます。 選択可能な項目は以下のとおりで、必要な情報だけを抽出したレポートを作成できます。
- 最小値(Min)
- 最大値(Max)
- レンジ(Range:最大−最小)
- 平均値(Average)
- 絶対最大値(Absolute Max)
- 開始時の値(Start Value)
- 終了時の値(End Value)
- 値の変化量(Delta)
- 標準偏差(Std Dev)
これらの項目はチャンネルごとに個別にチェックを入れて選択できるため、 「速度は最大値と平均だけ見たい」「油圧は最小値と標準偏差を見たい」 といった 用途に応じたレポート構成が可能です。
2. セクション単位での比較
表の列は「直線0-1」「ターン1-2」「ターン2-3」など、 サーキットの区間ごとに分かれています。 これにより、区間ごとの挙動差が明確になります。
例:
- ターン1-2で油圧が急低下 → 横Gによるオイル偏りの可能性
- 直線5-6でラムダが薄い → 燃料供給不足の兆候
「ログ内のすべてのチャンネルを統計的に整理し、区間ごとの挙動・異常・傾向を一目で把握するための総合レポート」
10.Section Timeシート

<Section Timeシート>
1.ラップ全体のタイム比較
表の最下段に「合計」があり、各ラップの総合タイムが並ぶ。 ここでまず「どのラップが速いか」を把握する。
2. 区間ごとのタイム差を比較
表の各行は「区間 0-1」「区間 1-2」など、筑波サーキットの区間を示す。 各ラップの区間タイムが並ぶことで、
- どの区間でタイムを稼いでいるか
- どの区間でロスしているか
- セッティング変更前後で改善した区間はどこか
が明確になる。
3.複数ラップ・複数セッションの比較が可能
これにより 日を跨いだ比較 や 仕様変更の効果検証 ができる。
4. 右側のグラフで区間ごとの傾向を視覚化
右側の折れ線グラフは、区間ごとのタイム推移を示す。
- ラップごとのバラつき
- 特定区間だけ極端に遅い/速い
- 安定している区間、不安定な区間
が視覚的に分かる。
5.取捨選択により仮想BestTimeを表示される
6.このシートの使いどころ
- タイムが伸びない原因を特定したいとき
- セッティング変更の効果を区間単位で確認したいとき
- ドライバーの走りの安定性を評価したいとき
- 複数日の走行データを比較したいとき
特に、 「ラップタイムは良くなったけど、どこが改善したのか?」 「逆に、どこでロスしているのか?」 を知るのに最適。
「ラップを区間ごとに分解し、どの区間が速くてどの区間が遅いのかを数値とグラフで明確にする“タイム差の原因分析シート”」


